2013年10月11日金曜日

デンマークの芭蕉 (08/10/2010)

10月6日 
北白川に住むデンマーク人茶人の怪人ビスゴーさん宅へ,バナナの木を取りに行く。呼び鈴の無い玄関を開けて,ごめんくださいといいながら入って行くと,スンダのガムランが聞こえてきた。甘い歌声と子気味良い太鼓の響き。生成りの詰め襟を着たビスゴーさんが迎えてくれる。床の間に座ると,マッチをつけて,蝋燭とあんどんに火を灯す。柔らかな明かりが部屋に満ちる。デンマークには,火に感謝するキリスト教以前のお祭りがあるという。 

美人のお弟子さんが、薄いクッキーとお茶を持って来る。僕はいつもより丁寧に飲んでしまうが、ビスゴーはホイッって感じでアッサリと飲む。しばらくすると、美人さんがもう一度あらわれる。さっきのお茶は失敗だったという。おいしかった気がするが,あたらしいのを飲むとさすがに一段階違う味だった。ジャワやバリの話が尽きない。 

夏にコンサートに来た時に,イウィンさんがバナナの葉っぱが欲しいと言ってもらって帰った。家で蒸し菓子を作りその写真をメールで送ると,ビスゴーさんから「バナナが育っているから取りに来て!」と連絡があった。彼は、以前は一乗寺のあたりに住んでいて,そこにはバナナがいっぱいなっていて,これはそのバナナの生き残りなのだ、と。松尾芭蕉は,一乗寺に住んでいたことがあり,その縁で名前を 芭蕉にしたというのだという。バナナの和名は芭蕉だけど,ほんとかなあ?まあ、とにかく由緒あるバナナの木が、我が家へ来ることになった。春までは鉢の中,暖かくなったら,外へ植え替えてやろう。

やすりとハンマーと緑の石 (08/10/2010)

10月7日 
9時すぎに北野白梅町にあるウィークリーマンションへ,ガムラン調律師のスグンさんを迎えに行く。内線電話をしても、呼び鈴を鳴らしても出てこない。歩いて立命館へ行ったかと,大学まで行ってみるがいない。そうこうするうちに部屋から出てきた。なんとシャワーをしていたとのこと。 

10時前から調律を始める。鉄琴のようなサロンやグンデルは,ヤスリやグラインダーでどんどん削って行く。真ん中や端っこを削って、音高を変えて行く。5年間も倉庫に眠っていたので,かなり調律が狂っている。というか、5年前に演奏したときからかなり狂っていたのだ。僕は,スグンさんの横で、仕上がった鍵盤を磨いた。バトゥ・ヒジョウ(緑の石)をガソリンに溶かし,ぼろ布に染み込ませて鍵盤をこすり,後でからぶきをする。見事に輝きはじめる。くせになりそうである。輝きに魅せられるのだ。 

昼過ぎまでがんばって、休憩。この楽器は,5年前にジョグジャカルタ特別州から京都府に送られたのだが,紆余曲折があり、立命館におかれることになったのだ。見事なフルセット。今回,ジョグジャ京都友好提携25周年記念公演のために、調律をすることになった。全部やるのに4日間はかかる。今日で、3日目。なんとか先が見えてきた。 

ちょっとリッチな学食「カルム」で、サワラの西京焼弁当を食べて,午後からもがんばる。スグンさんは,鍵盤からお鍋型のボナンに取りかかった。ボナンは、主に叩いて調律をする。レールの切れ端にボナンを乗せて,ハンマーでがんがん叩く。かなり豪快だ。ガムランの調律は豪快に見えるが、実は繊細な面もある。グンデルを調律した後,調律する楽器とグンデルを交互に叩き,共鳴させて、音高を決めて行く。調律師の中には,セント値をはかる器具を使う人もいる。午後からのボナンは,調子よく進んで行った。僕もどんどんと磨いて行った。5時前に作業終了。 

この日,スグンさん以外の舞踊家や演奏家18人が来日した。はるかと地下鉄タクシー乗り継いで、どうにかホテルへ到着していた。みんな疲れきっていたが,7時からスペース天で練習があったので,演奏家4人とスグンさんと舞踊家のアリンさん、そして王様の弟のグスティ・ユドさんが、僕と真さんの車に分乗して、天へ向かった。 

9時まで練習をし,一行へホテルへ送り届け,とんぼ返りして,豊能の家へ戻ると,日付が変わる頃だった。星がきれいだった。カシオペヤが北の空に上がっていた。さてと、日曜日まで,忙しくなりそうだ。

晴美+佐久間ダンス@現代思想 (29/09/2010)

「現代思想」青土社10月号が発行されたよう。臨床哲学が特集されています。本間直樹さんと玉地雅浩さんが、「身体は見えるものである 理学療法からダンスへ」という文章を共同執筆している。これに際して,本間さんからインタビューを受けた。 
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%CE%D7%BE%B2%B8%BD%BE%DD%B3%D8 

7月に、みんぱくで「侵蝕するガムラン」というコンサートをした。その中で,「ドン・テ・シペシ」というタイトルで、マルガサリ+Yangjah+たんぽぽの家メンバーで、即興パフォーマンスをした。それに向けて、たんぽぽの家で何度か練習を行った様子を撮影した映像を見ながらのインタビュー。 

たんぽぽに家きっての存在感あるダンスをする晴美さんと、ひさびさにダンスをした。向かい合ってしばらくやり取りがあって,ダンスがはじまる感じだ。どうして、ダンスがはじまるのか。その時の様子を、からだでじっくりと反芻しながら映像を見て,言葉にしてみた。 

本間直樹さんが、うまく文章にして書いている。 

以下引用 

・・・ ・・・ 

この記録を観ながら、Bは筆者に対して次のように語る。「僕とBさんとは、これまでも何度か一緒に舞台に立ったこともあり、二人のあいだに、表現することに向かうための基本的な信頼関係が成立している。(映像を観て思い出しながら)このとき、僕はAの振舞いを真似て発展させている。しかし、完全な真似ではなく、わざとちょっと変えてやる。ほんの数回やるとAさんが喜ぶ。自分の動きに近いことがパフォーマンスになっている、自分の動きが僕によって採用されている、ダンスにされているのをどうも喜んでいるようだ。その、ダンスが成立した感じになると、今度は大胆に動き出す。それだってダンスになるよ、と僕も動く。こういうのは普段の捌け口を求めるような、感情の吐き出しとは違う。遊びになり、ダンス化している。」 
 事前にパフォーマンスに参加することに同意がなされていることからも明らかであるが、AもBの両者とも、自分の身体が他者によって見られることを承認している。ここで見られるような身体の表現は、根源的に対他的な営みであり、動く自分の身体が、他者からの承認(あるいは否認)をともなう〈見えるもの〉であることを追求している。しかも両者は、互いに見ることと見られること交換しつつ、模倣による閉じた循環に陥ることなく、開かれた〈対〉を形成している。この開かれた〈対〉によって、どちらもが最初は予測していなかったような大きな振りやポーズが生成されているのである。そのことが両者によって喜びとして感じられていることは、このような生成の場に立ち会った者にとっても直接に感じとられる。その意味でも、二人だけの世界ではなく、開かれた〈対〉が演じられているのである。 

・・・ ・・・ 

晴美さん、目力あるね、最後の立ち上がってのダンスもすごいねえ。まねできないねえ。 


http://www.youtube.com/watch?v=_9lxGJvnZA0

扇風機のダンス 女子大生とダンス (10/09/2010)

明日,奈良と堺の高齢者の施設に行って,ワークショップをします。はしごです。午後は奈良,そして夜は堺。老人の方々とも一緒にダンスをしたいのですが,まずはケアをしているスタッフの方と仲良くなりたいと思っています。奈良へは前回下見へ行ったので、明日が第1回目。堺は,前回から始まったので,明日が第2回目です。堺の第1回目の様子を、少し書いてみます。 

8月20日 
大阪大学コミュニケーションデザインセンターの本間直樹さんと堺の高齢者施設へ。住宅街にある元別荘の1軒家なので、少し迷った。玉地雅浩さんと西村ユミさんも遅れてやってきた。スタッフの方4人にインタビューするところから始めた。リーダーの細川さんは独特のキャラクターで、本音トークの人だった。老人がみんなそろって体操したり,折り紙したりするのはおかしいやんってことで、この施設にはリクレーションが無いということだった。常駐スタッフは6人で,みんな若くてとても元気がよかった。僕は,ワークショップ用にペットボトルも持ってきていたけど,なんだか別のことがしたくなったので,部屋でぐるぐる回っていた扇風機で遊ぶことにした。 

http://www.youtube.com/watch?v=pAeiPwxRbwM

http://www.youtube.com/watch?v=XrunUF7YcAY]

細川さんによると、普段もリクレーションは無いが,突然社交ダンスを踊りはじめるおばあさんとダンス大会になったり,つねってくるおじいさんの攻撃を防御するところからダンスが始まったりすることがあるとのことだった。扇風機で遊ぶのは、馬鹿げているのかもしれないが,スタッフのみんなは大まじめに遊んでくれた。細川さんが羽根を壊して,ようやく終了になった。壊して終わるなんて,小学生みたいだなあ。 

8月24日 
ここのところちょこちょこ会っているコンテンポラリーダンスの砂連尾理さんに頼まれて神戸女学院大学へワークショップに出かけた。砂連尾さんは、伊丹のアイホールのプロジェクトで、市民や大学生とダンス作品を作っているのだ。 
http://saalekashi.exblog.jp/ 

10時50分に阪急門戸厄神駅に待ち合わせ。舞踊専攻があるなんて知らなかった。立派なスタジオもある。11時から16時までワークショップを行った。スタジオの裏からは,甲山と六甲山が見えた。声を向いの谷に放り投げてみた。それから空気を、甲山まで投げてみた。そして指と腕で六甲山をなぞってみたり,雲をなぞってみたり。スタジオへ戻ってからは,ペットボトルのワークもやってみた。普段バレエやコンテンポラリーダンスのレッスンをしている彼女たちにとっては、相当変わったワークだっただろうなあ。それでも興味津々でやってくれた。みんなありがとう。公演の成功を祈っています。 



























ペットボトルをからだに載せるワークの写真です。 


2013年10月10日木曜日

屋上即興 (31/08/2010)

8月21日 
みんぱくでも一緒に踊ったYangjahさんとミュージシャンのJerry Gordonさんが主催する「屋上即興 Rooftop Improvisation」に参加。アメリカ村のど真ん中のビルの屋上からは,ムアッとする空気の向こうに月が見えていました。本間直樹さんが映像をYou Tubeに、写真家のJean-Yves Terreaultさんが写真をアップしてくれています。 

写真家のJean-Yves Terreaultさんの写真 
1枚目の写真を見ると,ゆったり踊っているように見えるんだけど,映像で見るとほんの一瞬です。写真家の視点,写真のおもしろさ。 

http://www.terophoto.com/Recent-Projects/Rooftop-Improvisations-10-08/13471619_rWPfQ#980978508_t4SAV 

JerryさんとアコーディオンのRyotaroさんとの即興。みんなとは初対面でした。 
この日は,出演メンバーをグループに分けて,何通りかやりました。このセッションだけでも30分以上ありましたが,例のごとく本間さんが、ここぞという10分を切り取ってくれました。編集はしていないのです。 

http://www.youtube.com/watch?v=vdrlqI49OVk#t=11

こちらは、最後のセッション。創作楽器のCharles-Eric Billardさんとお琴の今西玲子 さんと。最後の方で,JerryさんとYangjahさんも加わってきます。この日は,Won Jiksuさんも来ていました。彼とは,以前に京都文化博物館で伊藤愛子さんと3人でパフォーマンスをしたことがあります。この日のウォンさんの即興も最高でした。それと、映像にはないんですが,お客さんも即興で参加してくれました。後で聞くとくらげさんというダンサーで,クラゲダンスをふたりで熱演しました。 

http://www.youtube.com/watch?v=B8NdPz6cljs

YangjahさんとJerryさんとは、次は9月19日に天神橋7丁目にある「アートセントー」でやります。